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読んだ雑誌感想――ミアシャイマー登場

さりげなく最近読んだ雑誌の感想。

a. 柳田邦男江上剛鈴木隆「山一日銀特融 エリートの甘え」(『文藝春秋』9月号)

柳田氏が各分野の専門家と鼎談する連載の今回は、山一證券の破綻にみる日本の金融業界について。山一證券が破綻したのは山一特有の体質に原因があるようだが、やはり護送船団方式の弊害が大きい。

バブル崩壊による不良債権問題に対して金融機関からすべての報告を以前から受けていた大蔵省が何も責任をとらず、他方で両者のもたれあい関係によって金融機関に自浄能力を欠如させてしまった構造は、護送船団方式がもつ宿命的結果にほかならない。江上氏のこの指摘が重要だ――現在、経営状況がよくなったとされる銀行は、本来は公的資金のおかげで生き延びたにもかかわらず、いつの間にか自力で再編をやって立ち直ったという顔をしだしている。山一が自主廃業に至ったのは、そのように自分に都合のいいように考えたからではなかったか。

b. 細野真宏「世界一わかりやすい税の話」(同上)

最近、わかりやすい経済学の本を出して好評の、予備校講師・細野氏(数学講師)。世評芳しくない「給与所得控除の縮小」について、これはあくまで「どんぶり勘定」をやめるということであり、給与所得控除を実際に使われている額に見合うように是正することは間違っていないと云う。確かに必要経費が過大に認められているようなので、そうかも。

「説明責任」問題が秀逸。よく「国は説明責任を果たしているのか」と批判される政府は、云われるように本当に十分な「説明」をしていないのか。我々がそう思ってしまう原因は、第一に自分で調べようとしない自らの習慣にあることを細野氏は指摘する。事実としては、政府もそれなりにわかりやすい説明をしているのである。これは私もよく思っていたこと。テレビだけしか見ないで説明不足を批判するのはおこがましい。そう思うから、私などは「説明責任」をしきりに問う人々に懐疑的なのである。

c. 石原慎太郎佐々淳行「陛下、ご参拝を・・・!」(『諸君!』9月号)

一般には報道されていないが、石原都知事の危機管理体制構築への努力は涙ぐましいものがある。政府が何もしてくれないのだから、せめて地方自治体ができるかぎりの対応策を練っておくのは当然だろう。これからも頑張っていただきたい。

d. 伊藤哲夫「大勲位を返上しなさい」(同上)

駄文。肝心要のことが書かれていない。例えば、中曽根元首相の歴史観(「大東亜戦争=侵略戦争」等)を問題にするならば、なぜ、大東亜戦争は正当化されうるかを丁寧に検証しなければならない。が、それはなされていない。日韓併合の合法性を主張するなら、国際法の具体的条文を例示して、他の具体例を参考に、語られなければならない。が、それも不十分。「中曽根=リベラル」というカテゴライズも、ほとんど無意味。ただし、東京裁判の受け入れについて歴代政府がいかに苦心して拒否してきたかということの紹介は重要。

e. 萩原遼不破哲三議長は日本の金正日か」(同上)

これはお見事。上論文とは異なり、「不破議長=金正日」というカテゴライズが説得力をもった証拠とともに明らかにされる。萩原氏は、元『赤旗』記者で最近共産党から除籍された人。日本共産党が党規約にある「党の内部問題は、党内で解決し、党外にもちだしてはならない」という閉鎖性のなかで徐々に、しかし確実に組織として瓦解しているさまは面白い。つまり、党批判はゆるされないという独裁体制のなか、変化する国際情勢に対応できずに(いや、誤魔化しながら対応していくうちに)、もはや党としての存在意義さえ混乱に満ちているのである。不破議長の拉致問題をめぐる右往左往ぶりが、痛々しい。

f. ジョン・ミアシャイマー「20XX年 中国はアメリカと激突する」(同上)

日本ではほとんど知られない、アメリカのタカ派国際政治学者ミアシャイマーの初邦訳本刊行を記念して、一部が掲載された。本人は自分を「攻撃的現実主義者」と名乗り、国際政治をあくまでパワーの対決で把握する注目の学者である。しかし、だからといってネオコンと位置づけられない。ミアシャイマー氏は純国益の観点からイラク戦争を批判しているからである。

氏は国際政治を限りなく現実主義的にとらえる。国家がパワー(軍事力・経済力・人口)を動因として相克するのが国際政治の実態であり、覇権国と覇権国の争いが歴史をつくってきたと考えている。そこから眺めた今後の世界は、中国の覇権国家化。3つのパワーを備えた中国は必ず東アジアの覇権を狙う。そして、その中国に日本がいかに対応するだろうか。その選択肢は、日本自身が覇権国家化するか、アメリカの覇権を利用し続けることになるか、の2つに限られる。

かかる分析にあって、ミアシャイマー氏は諸国家の国内問題には全く触れていない。中国がこのままパワーを増大させていけるのかという疑問は無視されている。また、現在のヨーロッパが、ミアシャイマー氏の云うように覇権国の勢力均衡で維持されているかと云えば、そうではないだろう。そのような問題点を孕みながらも、氏の純粋なパワー構造理論は有益だと思われる。
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by le-moraliste | 2005-09-06 11:07 | 雑誌