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by le-moraliste
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総選挙メモランダムⅡ/読んだ雑誌感想

ここ数日で話題になっているのは、自民党県連の動向。今のところ造反組を支援する県連が圧倒的に多い。自民党執行部の意向に反して地元選出の議員を支援するという現象からわかるのは、日本の政治は政党よりも議員個人が重要なファクターになっているということだ。

それぞれの議員は地元に密着しており(原則として選挙では地元出身かどうかが第一に問われる)、ともすれば地元の利益を代弁する代表者となりがちである。党本部が地縁を無視して一元的に候補者を選考するイギリスの政党とは全く逆のシステムである。

日本人は自分と親しい間柄であることを好むのだろう。だが、有権者が議員個人に親近すればするほど、政党の存在意義が薄らいでいくのが現実。日本の政治では、下にいけばいくほど政党の理念が軽視されていくように思われる。それがかえって、国家レベルでの政治運用を困難にしてきたのではないか。政党が政権を獲得する手段にすぎないとすれば、与党となった政党の議員たちがその地位に安住して私的利益に走りやすい力学が働くだろう。この意味で、政党は、議員個人の汚職を防ぐ枠組みともなっているのだと思う。(また、政党そのものの腐敗を防ぐためには、政権交代の可能な体制を作ることが重要だろう。)

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ここ数日で読んだ雑誌論文。(すべて『諸君!』7月号に掲載)

山際澄夫「「国連幻想」に憑かれた『朝日』」

新アメリカ国連大使に就任が決まったボルトン前国防次官の功績を指摘し、ボルトン氏に安直に批判を加える朝日新聞を小馬鹿にしたもの。残念ながら、駄文。客観的説得力は無きに等しい論文である。元産経新聞記者らしいが、新聞記者らしい独り善がりの筆さばきに唖然である。

細谷茂樹「北朝鮮に「賠償」なんてとんでもない」

好論文。戦勝国への賠償は既に終了していること、被植民地国への賠償は法的根拠がなく日本が経済協力という形で責任をはたしたこと等を、歴史を追って軽やかに解説してくれる。北朝鮮には経済協力さえ不要であるとも思えてくる。

小山常美「公民教科書――五つの大罪」

歴史教科書に比して議論されることのない中学の公民教科書を、各社版を比較しながら、公民教育には何が必要かを論述した、これも好論文。まず国家論を提示し、次いで法を守るために政治権力が必要であること、そして政治権力の濫用を防ぐために法治主義や人権の概念、民主政治の原則、三権分立などを記述していくのが本来の公民教育だというのは重要。というか最重要。でも、扶桑社版を含めて、この条件をすべて満たすものはゼロ。

もうひとつ小山氏の指摘で重要なのは、日本国憲法の原則は、いわゆる三大原則だけではないということ。通常の三大原則――国民主権、人権尊重、平和主義――に加えて、間接民主主義、国際協調主義、象徴天皇主義、三権分立の計七大原則が、憲法学者の間でさえも常識だとか。中学で三大原則をしつこく教わった世代としては卒倒モノである。確かに、三権分立など絶対的に重要な原則がなぜ含まれていなかったのか、云われてようやく気づく。やはり、日本の教科書はおかしい。

野村旗守(はたる)「蠢く「反つくる会」の生態」

昨日、杉並区が扶桑社版の教科書採択を決定したが、教育委員会に殺到する反つくる会の団体の姿は異様なものだった。その彼らの母体が、共産党・中核派にあることを明らかにしている。国会でわずかな議席しかもたない共産党が、教師の間では圧倒的な力を持っていることの現実の不思議さを、改めて哀しむものである。

福田和也山本五十六――昭和海軍とその悲劇」

連載第二回。福田氏特有の、一個人の伝記にはとどまらない、幅広い歴史論・文化論をまじえて書かれている。山本五十六の生誕地・長岡が石油採掘の繁栄地だったとは。ということで、五十六本人の歩みはまだ、ほとんどでてこない。
by le-moraliste | 2005-08-13 04:39 | 新聞・ニュース