本・雑誌・ニュース・頭の中のメモ・メモ・ひたすらメモ


by le-moraliste
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

K氏 ―― 坪内祐三と粕谷一希

買い忘れていた本を近所の本屋で見つけたので、対価を支払うや否やさっそく家で読み始めた。坪内祐三『東京』(太田出版)。ナントカという雑誌に連載されていた、東京の街をテーマとしてエッセイ集のようだ。知らなかった。

例によって、先走って興味のあるところをパラパラめくっていると、いくつもの思わぬ言葉に出会った。ひとつは、坪内祐三が雑誌『東京人』の編集者時代に、編集長粕谷一希のとりはからう若手学者の研究会の助手をしていたということだ。そこには、坂本多加雄先生の名前が・・・。先生は、坪内祐三のことを知っていたのだろうか。あるいは、一編集者として、記憶に残らなかっただろうか。あの頃、坪内祐三の話題を話してみればよかった。当時の思い出でも話してくれたかもしれない。(いや、坪内祐三の名前は先生の前で云ってみた記憶もあるのだけど。)

それで、本書は坪内祐三の『東京人』時代のエピソードが豊富なので、そのあたりを中心に読んでしまう。そして、坪内祐三が編集部に入るいきさつとか、『東京人』という雑誌の創刊にまつわる話とかが面白かったのだけど(例えば坪内祐三の父親が『東京人』創刊の黒幕だったというような)、ちょっと意味ありげな名前の人物がでてくるところがある。

「K氏」と、本文では名前が伏せられてはいるが、同時に『秘密結社の記号学』という本をだしたとまで書いてあるのだから、K氏という表現は意味ありげだ。私のような読者はすぐネットでK氏の本名を調べるわけであるから。

K氏とは加賀山弘のこと。そんなもん、すぐわかった。でも、初めて聞いた名前である。K氏は編集部に半年ほど在籍しただけのようで、坪内祐三とは、常盤新平との関係のなかで結構な立場にあったようである。それはそれで、常盤新平との話のほうが面白いので、K氏のことはすぐ忘れてしまうのであるが、その数ページ前に、粕谷一希が雑誌を創刊する目的を書いてあるところが印象的だ。粕谷氏はなんでも、アメリカの雑誌『ニューヨーカー』の東京版をだそうというらしいのだが、坪内祐三によれば、粕谷氏はおそらく、『ニューヨーカー』を読んだことがないであろうというのである。

ここに反応してしまうのは、ちょうど粕谷氏の『作家が死ぬと時代が変わる』(日本経済新聞社)という聞き語りの本を途中まで読んでいたからだ。これは粕谷氏の自伝。まだ半分くらいなので、『東京人』創刊の頃の話までは読んでいなかった。

早速、こちらのほうを読んでみると、ありました。『ニューヨーカー』にヒントを得て新雑誌を創るというエピソードが。なるほど、粕谷氏が昔から『ニューヨーカー』の愛読者であるというわけではないことは明らかである。そして。

その前後もパラパラ読んでいたら(坂本多加雄先生の名前はなかったが)、「あとがき」を読んでビックリ、同じくK氏という名前が登場するのである(「あとがき」まで読んでしまった)。この本は、「水木楊氏とK氏の勧め」によってできあがった本であると本人が書いているのだ。

このK氏という人、この人物が坪内祐三の云うK氏と同じであるかどうかはわからない。もし同じ人物を指しているとするならば、K氏が、親しい粕谷氏の、自分が大きく関わっているこの本のなかでも匿名なのは、一体なぜなんだろうか。それだけ。

= 追記 =
『作家が死ぬと時代が変わる』を最後までちゃんと読んでみると坂本多加雄先生の名前が途中ででてきた。これは失礼。(2008.8.7.)
[PR]
by le-moraliste | 2008-07-28 20:25 |